Fire タブレットは、本体のストレージ容量が少ないモデルでも microSD カードを使うことで簡単に容量を増やすことができます。Amazon ビデオや Kindle 本などコンテンツが増えていくと容量不足になりがちですが、データを SD カードに保存することで本体のストレージ容量不足をお手軽に解消できます。内部ストレージの少ないモデルを使う場合には、SD カードはほぼ必須と言えるかもしれません。
microSD を選ぶ際にはまず容量から考えることが多いと思いますが、Fire タブレットを快適に使うには、容量と共に microSD の性能にも注意する必要があります。自分は最初、性能についてはあまり気にせず Amazon でベストセラーと書いてあったものを買ってなんとなく使っていましたが「これ、性能的には他のものと比べてどうなの?」と疑問に思ったので、microSD をいくつか入手して速度を比較をしてみました。
測定結果
以下は現在までに行った全ての測定結果の一覧表です。A1 SD Bench アプリでの測定結果の読み込みの速い順に並べました。
* 2019/07/26 データ追加
microSD | Read (MB/s) | Write (MB/s) | Read Seq Q32T1 | Write Seq Q32T1 | Read Ran Q32T1 | Write Ran Q32T1 |
---|---|---|---|---|---|---|
Transcend 128GB (U3, V30, A1) | 65.06 | 51.50 | 54.94 | 49.87 | 5.066 | 3.729 |
SanDisk Ultra 128GB (U1, A1) | 65.03 | 53.02 | 54.47 | 44.38 | 4.763 | 2.102 |
SanDisk Extreme 32GB (U3, V30, A1) | 64.45 | 61.34 | 56.78 | 52.01 | 4.880 | 2.446 |
シリコンパワー 128GB (U3, V30, A1) | 63.98 | 45.41 | 50.87 | 36.97 | 3.796 | 2.949 |
Samsung Evo Plus 64GB (U3) | 56.93 | 43.78 | 56.75 | 52.12 | 4.470 | 2.537 |
SanDisk Ultra 64GB (U1, A1) | 56.74 | 28.78 | 57.17 | 39.27 | 4.861 | 2.185 |
Transcend Premium 64GB (U1) | 56.69 | 31.80 | 56.52 | 38.55 | 4.647 | 1.682 |
シリコンパワー Elite 64GB (U1) | 55.89 | 43.73 | 56.13 | 49.80 | 4.082 | 3.279 |
Samsung Evo Plus 32GB (U1) | 46.31 | 31.45 | 56.48 | 31.24 | 4.555 | 2.706 |
シリコンパワー Elite 32GB (U1) | 45.26 | 27.82 | 56.96 | 28.42 | 3.889 | 3.227 |
Transcend Premium 32GB (U1) | 42.45 | 22.39 | 56.23 | 22.39 | 4.390 | 1.354 |
Fire タブレットで使用する際に最も重要なのは読み込みの性能です。読み込み性能が高いほど動画や Kindle 本などのデータの読み出しが速くなり、最適なパフォーマンスが得られます。
A1 SD Bench での測定では、128GB の SD カードがリード 65MB/s 台で最も速い結果となりました。サンディスクの上位モデルにあたる SanDisk Extreme はリード・ライトともに 60MB/s を超えており、その他の値も全般的に高い結果が出ました。当然ながら上位モデルは性能が高いようです。
結果を全体的に見てみると、容量の大きな microSD の方が容量の小さなものより読み込みが速い傾向にありました。容量の大きな SD カードは比較的新しく発売されている製品のため、高速な規格に対応しているものも多く、基本的には容量の大きなものほど性能も良いのではないかと思います。
なお、Fire OS 6 (Fire HD 8 (2018) など)の機能で microSD を内部ストレージとして使う場合には、アプリをサクサク動作させるための性能を満たした「A1」規格に対応した microSD を使用してください。A1 に対応していない microSD を内部ストレージとして使うと、アプリの動作が遅くなるなど、タブレットの動作に影響が出る可能性があります。
測定方法
PC および Fire HD 8 (2016) で測定を行いました。
PC では USB 3.0 のカードリーダー (Transcend TS-RDF5K) を使用し、CrystalDiskMark で microSD の速度を測定しました。シーケンシャル(連続したデータ)アクセスとランダムアクセスが計測されます。使用した PC の性能がボトルネックとなり、各 microSD の最大性能が出ているとは限りません。結果はあくまで一定の条件下での比較として見てください。
Fire HD 8 では Android アプリの A1 SD Bench を使用して計測を行いました。計測ごとの誤差が大きかったため、何度か計測をして近い値が 2 回出た場合にその測定値を採用することとしました。また、ベンチマークの結果が妥当かどうかを確認するため、ファイルマネージャーアプリを使用して、内部ストレージから microSD への 1GB のファイルのコピーにかかる時間をストップウォッチで測定しました。
(※ SD カードにより計測時期が異なっているため、PC や Fire OS アップデートの影響で多少の誤差はあるかもしれません。あしからずご了承ください。)
比較した microSD カード
32GB
・Transcend Premium 32GB [UHS-I U1] (TS32GUSDU1PE)
・シリコンパワー Elite 32GB [UHS-I U1] (SP032GBSTHBU1V20BS)
・Samsung Evo Plus 32GB [UHS-I U1] (MB-MC32GA/ECO)
・SanDisk Extreme 32GB [UHS-I U3, V30, A1] (SDSQXAF-032G-GN6MA)
トランセンド、シリコンパワー、サムスンが「UHS スピードクラス 1 (U1)」対応。サンディスクのみ上位モデルの製品で「UHS スピードクラス 3 (U3)」「ビデオスピードクラス 30 (V30)」「アプリケーションパフォーマンスクラス 1 (A1)」対応です。
64GB
・Transcend Premium 64GB [UHS-I U1] (TS64GUSDU1PE)
・シリコンパワー Elite 64GB [UHS-I U1] (SP064GBSTXBU1V20BS)
・Samsung Evo Plus 64GB [UHS-I U3, V30, A1] (MB-MC64GA/ECO)
・SanDisk Ultra 64GB [UHS-I U1, A1] (SDSQUAR-064G)
サムスンが「U3」対応、トランセンド、シリコンパワー、サンディスクは「U1」対応です。サンディスクは「A1」にも対応しています。
128GB
・Transcend 128GB [UHS-I U3, V30, A1] (TS128GUSD300S-AE)
・SanDisk Ultra 128GB [UHS-I U1, A1] (SDSQUAR-128G)
・シリコンパワー 128GB [UHS-I U3, V30, A1] (SP128GBSTXDU3V20AB)
32GB の結果詳細
64GB の結果詳細はこちら
CrystalDiskMark のベンチマーク結果
読み込みでは、シリコンパワーのランダムリードが若干遅い以外は、どれもほぼ同じ数値でした。どの microSD も PC による読み込みでは大きな差は出ないようです。
書き込みに関しては、SD カードごとに性能が異なっていました。
シーケンシャルライト (Q32T1) の結果は速い順に以下のようになりました。
サンディスク | 52.01 MB/s |
サムスン | 31.24 MB/s |
シリコンパワー | 28.42 MB/s |
トランセンド | 22.39 MB/s |
サンディスクは U3, V30(最低保証速度 30MB/s)に対応していることもあり、書き込み性能は高いようです。その他の SD カードは、メーカーごとに書き込み速度の差が見られ、U1 の中ではサムスンが最も速い結果になりました。
ランダムライト (Q32T1) の結果は速い順で以下のようになりました。
シリコンパワー | 3.227 MB |
サムスン | 2.706 MB |
サンディスク | 2.446 MB |
トランセンド | 1.354 MB |
シリコンパワーはランダムリードが他より遅い反面、ランダムライトは一番速いという結果になりました。トランセンドはシーケンシャルライトに続きランダムライトでも最下位で、書き込み性能が全体的にあまり良くないようです。
ランダムアクセスの性能は、SD カードにアプリをインストールする場合にはアプリの動作速度に多少影響するはずですが、動画や本のデータを SD カードに保存するのが主な用途であれば、それほど気にする必要はありません。
A1 SD Bench の結果
U3 対応のサンディスクは読み書き共に 60MB/s を超えた速度が出ました。U1 対応の SD カードの中ではサムスンが最も速い結果となりました。
PC での測定ではあまり差が出なかった読み込み速度も、Fire HD 8 で測定をした場合には若干の差が出ました。ベンチマークの計測方式が異なっている可能性もありますが、PC で使用する場合よりも、Fire タブレットで使用する場合の方が microSD の性能差が出やすいのかもしれません。(UHS 対応による差か?)
1GB ファイルのコピーにかかる時間の測定結果
ファイルコピーの結果はベンチマークの結果にほぼ準じたものになっており、ベンチマーク結果は概ね妥当と見てよさそうです。
結果から分かったことなど
自分が最初に使っていたのはトランセンドの microSD だったのですが、今回の検証により 32GB の同クラスの microSD の中では最も遅いものであることが判明しました(^_^; SD カードにファイルをコピーする時などには多少モタつく感じはありますが、読み込みがそれほど遅いわけでもないので、実用上は大きな問題もなく普通に使うことはできます。しかしベンチマークの結果を見る限り、性能的には積極的に選ぶべき SD カードとは言えなさそうです。
Samsung EVO Plus はベンチマークの各項目が上位に入っていました。突出した性能はないものの、全体的な性能のバランスは良い SD カードだと思います。
SanDisk Extreme は U3 に対応した上位モデルの SD カードで、ベンチマークでも読み書きの性能が抜群に高く、とにかく速いのが欲しいという方にはおすすめの microSD です。安価に購入できる並行輸入品は、日本国内ではメーカー保証を受けられないため、その点は気になりますが、大抵の場合、販売しているお店が初期不良の交換(購入から1〜2週間以内)対応をしており、お店の独自保証がある場合もあります。SanDisk は偽物も多く出回っているようなので、なるべく信頼できる店から購入して、購入後も念のためベンチマーク等で性能を確認してください。
シリコンパワーは性能はそこそこですが安定して使用できており、メーカーの永久保証もあります。保証を含めて総合的に考えた場合は、こちらが無難な選択肢かもしれません。ちなみに Android アプリの SD Insight で調べたところ、中身は Panasonic 製のチップが使われていました。
無難という点では今回の検証には含まれていない Amazon 公認の SanDisk Ultra もありますが、こちらは他の製品に比べ少々割高なので、コスト的にはあまりメリットはない気がします。とはいえ、世界大手の SanDisk 製で品質は良く、タブレットでの使用に十分なスペックもあり、 Fire での動作も確認済み(Made for Amazon 認定取得)なので、Fire で安心して使える製品であることは間違いありません。
32GB microSD のまとめ
32GB の microSD では、メーカー保証を考えず性能で選ぶなら SanDisk Extreme、性能のバランスで選ぶなら Samsung EVO Plus、性能と保証で総合的に無難なのがシリコンパワー、という感じかなと思います。トランセンドも普通に使うことはできるので、価格によってはアリかもしれません。安心感を優先するなら Made for Amazon の SanDisk Ultra でも悪くはないと思います。
それぞれに一長一短があるので、どれが最適かを断言するのは難しいですね(^^;
人によって何を重視するかは違うはずなので、色々な面からから判断して、自分にとってこれが最適だ、と思うものを使うのが良いのではないかと思います。
最後に、自分が使用した microSD がたまたま当たり or ハズレのロットだったという可能性もあるため、必ずしも各製品の性能がこの検証の結果通りであるとは限りません。この記事の内容は参考程度に見てください。
64GB の結果詳細はこちら
更新
内容を一部追加・修正しました。
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